義経が埋めた宝物

 「朝日があたって夕日が映え、雀がチュンチュン鳴く所、大釜いっぱい鍋いっぱい」
上鶴間の中和田から下鶴間にかけて、昔こんな歌がはやっていたそうです。この歌、実は宝物のありかを歌っているというのです。しかも、あの源義経が密かに隠した宝だというのです。今NHKのドラマで放映しているあの義経です。
その昔、一の谷から壇ノ浦にかけて、平家を打ち破って大活躍をした義経でしたが、兄頼朝の勘気を受けることになり、鎌倉入りを許されませんでした。兄に対して決して異心のないことを伝えるのでしたが、頼朝は冷たくあしらうだけです。やがて義経は夢にまで見た鎌倉入りを諦め,京に戻ることになりました。
一行が境川筋の鎌倉街道を通り中和田あたりまで来た時,一羽の鶴が鎌倉目指して飛んでゆくのを見て義経は「自分は二度と鎌倉の地を踏むことはないだろう」と嘆きました。そしてみやげに持参した珍器重宝をその場に埋めたというのです。
前掲の歌はそれをうたっているのです。また鶴が舞っているのを見たということで,鶴間という地名がついたとも言われています。
さて、宝物は今も中和田のあたりに?

文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より