相原の北の外れ、境川のほとりに華蔵院というお寺があります。
むかし、この華蔵院の森に、どこからともなく「仏法僧」という鳥がやってきて、毎晩「ぶっぱん、ぶっぱん」と鳴いていました。今はこの鳥の正体は「このはずく」といわれていますが、むかしは、神秘的な鳥とされていました。近くに住む村人も、毎晩この鳴き声を聞いて気味のわるい思いをしていました。
そこで寺の住職は、一計を思いつき、さっそく村人を寺に集めました。
「皆の衆、この頃仏法僧が寺の森で鳴いているのを知っているね。それが拙僧には『坊主は死んだか、坊主は死んだか』と聞こえる。それはこの頃寺が荒れているので、仏さんが使いをよこされて拙僧を責めているのだとわかったのじゃ」 寺の修理代は五十両かかるといわれ、村人は相談しましたがなかなかまとまりません。その中の一人が見かねて立ち上がりました。門前に住む彦左衛門です。「和尚さん私が五十両だします。その代わり私の孫子の代まで寺一番の檀家にしてください」
仏法僧をうまく利用した和尚さんのもくろみはうまくいきました。仏法僧もわかってか、その後一度も鳴かなかったそうです。
文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より