たたりのたたり

 昔、久世大和守広之という奉行が検地の際、下溝の各地をまわって、古山の十二天社でひと休みしていました。当時、祠は下のみたらしの水口の辺りにあったそうです。
その時、村の長が「このお宮の社領として、年貢の免除をお願いしたい」と頼みました。すると、久世大和守は「この社をもっと高いところに移すのだ。しからば望みを叶えてつかわす」といって、「大旦那久世大和守、右十二天に御供免寄付するものなり」という書付を与えました。この書付とお宮の鍵は、古山一番の物持ちの弥左衛門がずっと預かっておりました。
ところが何故か、弥左衛門の身代がだんだんおかしくなってきたのです。「百姓の分際で、あらたかなお宮のものを預かっているからだ」と村中のうわさになりました。それを聞いた弥左衛門は書付と鍵を、下溝八幡宮別当大光院に預けてしまいました。
しかし、悪い事は重なるものです。その後弥左衛門の家は夜中に火事を出し、丸焼けになったのです。わずかに家に伝わる大小の刀を持ち出しただけでしたが、それも間もなく鍛冶屋の手に渡り、鋸になってしまいました。そのたたりのせいか、女房の両眼はつぶれてしまったそうです

文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より