さいかち原の人骨

 上溝から座間に向かう県道沿いに、さいかち原という所があり、数本のさいかちの老樹が立っています。
この木は武田信玄が小田原攻めに南下した際に、戦勝を祈って植えたものだと伝えられています。また北の端に「墳骨霊魂塔」と刻まれた小さな石碑があり、この碑に次のような話が伝わっています。
さいかち原に一人の男がが住んでいました。ある日、家の裏にある崖の日当たりのいい場所に、薩摩芋の苗床を作ろうとして、大きな石をとりのけました。するとぽっかりと大きな穴があいて、白い煙が上がったのです。男が穴の中に入ってみると、土が棚のように掘られていていて、そこに人骨が置かれていました。
その話を村人たちが伝え聞いて、これはきっと由緒ある方のお墓ではないかと、お参りに来てはお賽銭をあげていくようになりました。 これを見ていた地主が欲張り心を起して賽銭箱を作り、それらしく飾り立てて、賽銭をこっそりくすねていました。しかしすぐ罰があたって女房が発狂してしまったのです。驚いた村人たちはさっそく祈祷してもらい前記の石碑を建てたということです。穴は横穴古墳の跡で、人骨はその時代のものと言われています。

文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より