魔性と契った娘

 むかし、大島村の石盾尾神社の禰宜(神職の位の一つ)の娘におそよというきりょう良しの娘がいました。この娘が若い男女が集まる茶摘の夜に、小倉村の名主の息子に見染めらました。この息子も業平かと見まごうばかりのいい男でしたので、娘の方も熱くなってしまいました。
ということの成り行きで、おそよは身重な体になりました。
心配した母親は父親と相談して、こうなったうえは二人を一緒にしようということになり、先方の意志を確かめようと、小倉村に名主の息子を尋ねました。
ところがそのような若者は一向に見当たりません。変に思った母親は、土地の老婆に相談しました。母親は教えられた通り糸巻きに糸をいっぱい巻きつけてその先に針を通して、それをおそよに持たせて男の来るのを待ちました。そして別れる時おそよは糸巻きの針を男の羽織の襟に縫いこみました。
途端に、男の形相が変わりおそよを恨めしげに見たかと思うと、暗闇の中に生臭い匂いを残して消えてしまいました。
気を取り直して母と娘は糸の行く手をたどっていくと、下大島の白森稲荷の大きな木の空洞にたどり着きました。
その中に大蛇が死んでいました。娘は早産して赤子は蛙に喰わせてしまいました。

文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より