縁切り橋

 上溝の四谷から、田名の葛輪へ通ずる鳩川にかけられた橋に、三谷橋があります。この橋は別名縁切り橋といわれています。
そのむかし、この橋の近くに某の兄弟が住んでいました。兄の方はまじめで家業に励んでいましたが、弟の方は酒癖が悪くて、いつも酒を飲んでは乱暴狼藉をはたらいて、全く手がつけられない有様でした。
あるとき、また弟が酒を飲んで暴れ始めたので、兄があまりのことに、とうとう堪忍袋の緒が切れて、弟を橋のところまで引きずって行き、橋の上から川に突き落としてしまいました。
突き落とされた弟は「あにき助けてくれ」と叫びましたが、兄は「黙れ」と言ったまま家に戻ってしまいました。哀れな弟は酒を飲んでいたために、溺れて死んでしまいました。ということがあってこの橋は、縁が切れるという噂が立ち、婚礼はもちろん、祝い事のときは橋を渡らないという風習になってしまいました。
またいつの頃からか、橋の近くにお地蔵様が建てられて、子育て地蔵と呼ばれ、小さな子どものいる家は皆お参りしたそうです。夜泣きとかお寝しょなどの時は、頭巾や前かけをつくって納めました。

文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より