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一遍上人 笈退り(おいしゃり)の由来


  むかしむかしのこと、日照りが長いこと続く年がありました。
もう八十日も雨が降らず、田畑の青いものは、照りつける日差しにチリチリに枯れて、見る影もない有様になってしまいました。
百姓たちの嘆きと悲しみは見るに偲びありませんでした。
 おりしも、当麻山に留錫(りゅうしゃく、僧が行脚中に寺に留まること)していた一遍上人は、この惨状を救うべく敢然と起ちあがりました。
 一遍は三日三晩、一心を込めて念仏を唱えました。
村人たちも何事が起きるのかと、心配げに集まってきました。
一遍はやおら立ち上がると、手にした錫杖をもって、地面を三寸ほど突きました。
その時です。
地面がぽこっと割れたかと思うと、水がコンコンと湧き出したのです。
村人たちは腰を抜かさんばかりにびっくりしました。
そして両手を合わせて拝み始めました。
 水はどんどん湧き出してあたり一面にあふれて、傍らに置いてあった笈を後ろに退らせてしまいました。
 以来、この湧き水は笈退りの水と呼ばれるようになり、この辺りの農業用水としては勿論、生活用水の水源地として、その霊験がたたえられています。

文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より