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貧乏神


  下磯部の田んぼの中に、「もん屋稲荷」とよばれている小さな祠(ほこら)があります。
 ここはむかし「もん屋」という豪家があった跡です。
使用人をたくさん使って米を八王子の方へ小荷駄で出荷しておりました。
食事の合図に釣り鐘をついて知らせたほどの豪勢さでした。
 切り通しの弥五さんという馬子が、ある年の一月十五日、八王子からの帰り道、御殿峠にさしかかりました。
昼間でも追いはぎが出るという淋しいところです。
弥五さんの前に、どこからともなく乞食坊主があらわれて、疲れたから馬に乗せてくれと言うのです。 人のいい弥五さんが、坊さんを馬に乗せてもん屋の所までくると、不思議なことに坊さんはいつの間にかいなくなってしまいました。
 さてその翌日は小正月。
もん屋では寒餅をついてついて大賑わいでした。
 そのうち突然どかっという大きな音がして、土間の内井戸の土が崩れ落ちたのです。
賑わいは一瞬止まり、一同は不吉の感に駆られました。
 案の定、それからもん屋ではよくないことが続き、さしもの大身代も跡形もなくつぶれてしまいました。
 あの坊さんは貧乏神だったのです。なぜ貧乏神がもん屋に来たのか誰も知りません。

文・絵:いちむら あきら
座間美都治
相模原民話伝説集より